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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)9528号 判決

原告

堀川清隆

ほか二名

被告

森島公治

ほか一名

主文

一  被告らは、各自、原告堀川清隆に対し、金八〇三万八五一九円及びこれに対する昭和五五年九月二七日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告橋口連文に対し、金七二三万九八五八円及びこれに対する同日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告有限会社近代保温工業に対し、金四三万円及びこれに対する同日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

二  原告堀川清隆及び同橋口連文のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

原告ら代理人は、「(一)被告らは、各自、原告堀川清隆に対し、金九四五万九二二三円及びこれに対する昭和五五年九月二七日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告橋口連文に対し、金八四七万一九六二円及びこれに対する同日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告有限会社近代保温工業に対し、金四三万円及びこれに対する同日から右支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。(二)訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決並びに第一項につき仮執行の宣言を求めた。

被告鈴木春雄は、「原告らの請求をいずれも棄却する。」との判決を求めた。

第二当事者の主張

一  原告ら代理人は、請求の原因として、次のとおり述べた。

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五五年九月二七日午前七時ころ(天候雨)

(二) 場所 大阪市西成区千本南二丁目 府道高速大阪堺線玉出出路(以下「本件現場」という。)

道路状況 アスフアルト舗装され、北より南に下り傾斜となつていた。

(三) 加害車 大型貨物自動車(三河一一す五七七二号。以下「被告車」という。)

右運転者 被告森島公治(以下「被告森島」という。)

右所有者 被告鈴木春雄(以下「被告鈴木」という。)

(四) 被害車 普通貨物自動車(泉四四ら九七四一号。以下「原告車」という。)

右運転者 原告堀川清隆(以下「原告堀川」という。)

右同乗者 原告橋口連文(以下「原告橋口」という。)

右所有者 原告有限会社近代保温工業(以下「原告会社」という。)

(五) 態様 原告堀川は、原告車を運転して本件現場で赤色の停止信号に従つて信号待ちのため停止していた他の車両の後方に停車していたところ、原告車の後方から、赤色の停止信号に従わず、停止もせずに南進してきた被告車に追突され、そのはずみで前方に停車中のトレーラー車に玉突追突させられ、右両車両間に強くはさまれた(以下「本件事故」という。)。

2  責任原因

(一) 被告森島の原告らに対する責任(民法七〇九条)

被告森島は、被告車を運転して、高速道路の出路である本件現場付近を南進して来たが、同被告は、自動車運転者として、眠気を催した場合は、運転を一時停止して眠気を取り去つてから運転し、もしくは眠気を催さない場合は、前方左右の安全を十分確認したうえで進行する等して、先行車両に追突する等の事故発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然と居眠り運転のままで、もしくは前方左右の安全を十分に確認することなく、赤信号を見落したうえ、前方に信号待ちのため停止していた原告車の存在に気が付かないまま進行した過失により、本件事故を惹起した。

(二) 被告鈴木の原告堀川及び同橋口に対する責任(自賠法三条)

被告鈴木は、被告車を所有し、これを同被告の営む鮮魚運搬業のため運行の用に供していた。

(三) 被告鈴木の原告会社に対する責任(民法七一五条)

被告鈴木は、自己の営む鮮魚運搬業のために被告森島を従業員として使用していたところ、同被告は、右業務のため被告車を運転中、右(一)記載の過失により、本件事故を惹起した。

3  損害

(一) 原告堀川の損害

(1) 受傷、治療経過等

(イ) 受傷

原告堀川は、本件事故により、骨盤骨折、左股外傷性脱臼、左脛骨骨折兼腓骨骨折、肝機能異常の傷害を受けた。

(ロ) 治療経過

〈1〉 大阪府立病院

昭和五五年九月二七日から同五六年六月八日まで(二五六日間)入院した。

〈2〉 星ケ丘厚生年金病院

昭和五七年八月二三日から同年九月一日まで(一〇日間)入院し、同五六年六月九日から同五八年一月三一日まで(ただし、右一〇日間の入院期間を除く。その間の日数五九二日間、実日数三八五日間)通院した。

(2) 治療費 六四六万四五五〇円

原告堀川は、大阪府立病院における治療費として四〇三万六二九八円、及び星ケ丘厚生年金病院における治療費として二四二万八二五二円の、計六四六万四五五〇円を要した。

(3) 入院付添費 一五二万二七〇〇円

原告堀川は、前記入院期間中の付添費用として、左記(イ)及び(ロ)を合計した一五二万二七〇〇円を要した。

(イ) 前記入院期間中の職業付添人の付添費実費として、一三二万七七〇〇円を要した。

(ロ) 前記入院期間のうち、六五日間は、実母訴外堀川美春の付添を要し、その間の付添費用として、少なくとも一日あたり三〇〇〇円、計一九万五〇〇〇円を要した。

(4) 入院雑費 一八万六二〇〇円

原告堀川は、前記二六六日間の入院期間中、雑費として、少なくとも一日あたり七〇〇円、計一八万六二〇〇円を要した。

(5) 医師への謝礼 二万円

原告堀川は、前記治療期間中、医師への謝礼として二万円を支払つた。

(6) 通院交通費 一五万四〇〇〇円

原告堀川は、前記実通院日数の三八五日間、通院のため、一日あたり左記四〇〇円の交通費を要したので、同原告は本件事故に基づき、通院交通費として一五万四〇〇〇円の損害を受けた。

(イ) 京阪電車光善寺から枚方市まで 往復一六〇円

(ロ) 京阪バス枚方市から星ケ丘病院まで 往復二四〇円

右(イ)(ロ)の計 四〇〇円

四〇〇円×三八五=一五万四〇〇〇円

(7) 休業損害 八五九万一八八六円

原告堀川は、本件事故当時、原告会社で絶縁工事職人として稼働し、本件事故前の昭和五五年七月から九月までの三か月間に、計九〇万二三〇〇円の収入を得ていたところ、右原告は、本件事故により、同五五年九月二七日から同五八年一月三一日までの八五七日間にわたり休業を余儀なくされ、その間少なくとも右収入額相当の得べかりし収入を喪失したから、右原告の本件事故による休業損害は、八五九万一八八六円となる。

(算式)

九〇万二三〇〇円÷三×(八五七/三〇)=八五九万一八八六円

(8) 入通院慰藉料 三五〇万円

原告堀川の傷害の程度、入通院の治療の期間、本件事故による生活面及び勤務面に対する影響、その家族に与えた衝撃、右原告には全く落度がない点、並びに被告らに全く誠意がみられないという点等諸般の事情を総合的に考慮すれば、右原告の本件事故による精神的苦痛に対する慰藉料は、三五〇万円を下ることはないというべきである。

(9) 弁護士費用 一一〇万円

被告らは、本件事故の示談による解決に全く誠意を示さなかつたため、原告堀川は本訴提起を原告ら代理人に委任し、弁護士費用として一一〇万円の支払を負担した。本訴請求金額よりして右額は損害として相当性を有するものである。

(10) 損害額小計 二一五三万九三三六円

右(2)ないし(9)の各損害費目を合計すると、二一五三万九三三六円となる。

(二) 原告橋口の損害

(1) 受傷、治療経過等

(イ) 受傷

原告橋口は、本件事故により、頭部外傷、腰部挫傷、腰椎横突起骨折、左大腿骨折、両下腿骨骨折の傷害を受けた。

(ロ) 治療経過

〈1〉 富永脳神経外科病院

昭和五五年九月二七日通院した。

〈2〉 阪和病院

昭和五五年九月二七日から翌二八日まで及び同年一〇月一三日から同月二〇日まで(計一〇日間)入院した。

〈3〉 阪和記念病院

昭和五五年九月二八日から同年一〇月一三日まで及び同月二〇日から同五六年三月二三日まで(計一七一日間)入院した。

〈4〉 星ケ丘厚生年金病院

昭和五七年二月二日から同月一四日まで(一三日間)入院し、同五六年三月一九日から同五八年一月三一日まで(ただし、右一三日間の入院期間を除く。その間の日数三〇六日間、実日数二五三日間)通院した。

(2) 治療費 四五三万〇九四八円

原告橋口は、阪和病院における治療費として五一万九四四八円、阪和記念病院における治療費として二一五万三六八四円、及び、星ケ丘厚生年金病院における治療費として一八五万七八一六円の、計四五三万〇九四八円を要した。

(3) 入院付添費 一二七万八五五〇円

原告橋口は、前期入院期間中の付添費用として、左記(イ)及び(ロ)を合計した一二七万八五五〇円を要した。

(イ) 前記入院期間中の職業付添人の付添費実費として、九八万一五五〇円を要した。

(ロ) 前記入院期間のうち、九九日間は、妻の訴外橋口重子の付添を要し、その間の付添費用として、少なくとも一日あたり三〇〇〇円、計二九万七〇〇〇円を要した。

(4) 入院雑費 一三万五八〇〇円

原告橋口は、前記一九四日間の入院期間中、雑費として、少なくとも一日あたり七〇〇円、計一三万五八〇〇円を要した。

(5) 医師への謝礼 八万円

原告橋口は、前記治療期間中、医師への謝礼として八万円を支払つた。

(6) 通院交通費 九万一八八〇円

原告橋口は、本件事故により、前記通院期間中の通院交通費として、左記(イ)及び(ロ)の合計九万一八八〇円の損害を受けた。

(イ) 昭和五六年三月一九日から同五七年六月二四日まで五万〇八八〇円

右期間中の実通院日数二一二日間について、通院のため、京阪バスで大字から星ケ丘病院までの往復運賃として、一日あたり二四〇円、計五万〇八八〇円を要した。

(ロ) 昭和五七年六月二五日から同五八年一月三一日まで四万一〇〇〇円

右期間中の実通院日数四一日間について、通院のための交通費として、一日あたり左記〈1〉ないし〈3〉の計一〇〇〇円、合計四万一〇〇〇円を要した。

〈1〉 地下鉄北加賀屋から淀屋橋まで 往復三六〇円

〈2〉 京阪電車淀屋橋から枚方市まで 往復四〇〇円

〈3〉 京阪バス枚方市から星ケ丘病院まで 往復二四〇円

(7) 休業損害 八五九万一八八六円

原告橋口は、本件事故当時、原告会社で絶縁工事職人として稼働し、本件事故前の昭和五五年七月から九月までの三か月間に、計九〇万二三〇〇円の収入を得ていたところ、右原告は、本件事故により、同五五年九月二七日から同五八年一月三一日までの八五七日間にわたり休業を余儀なくされ、その間少なくとも右収入額相当の得べかりし収入を喪失したから、右原告の本件事故による休業損害は、八五九万一八八六円となる。

(算式)

九〇万二三〇〇円÷三×(八五七/三〇)=八五九万一八八六円

(8) 入通院慰藉料 二九〇万円

原告堀川の傷害の程度、入通院の治療の期間、本件事故による生活面及び勤務面に対する影響、その家族に与えた衝撃、右原告には全く落度がない点、並びに被告らに全く誠意がみられないという点等諸般の事情を総合的に考慮すれば、右原告の本件事故による精神的苦痛に対する慰藉料は、二九〇万円を下ることはないというべきである。

(9) 弁護士費用 九五万円

被告らは、本件事故の示談による解決に全く誠意を示さなかつたため、原告橋口は本訴提起を原告ら代理人に委任し、弁護士費用として九五万円の支払を負担した。本訴請求金額よりして右額は損害として相当性を有するものである。

(10) 損害額小計 一八五五万九〇六四円

右(2)ないし(9)の各損害費目を合算すると、一八五五万九〇六四円となる。

(三) 原告会社の損害

(1) 物損 三八万円

原告会社は、原告車を所有していたところ、本件事故により原告車は全部損壊し、これにより原告会社は三八万円の損害を受けた。

(2) 弁護士費用 五万円

被告らは、本件事故の示談による解決に全く誠意を示さなかつたため、原告会社は本訴提起を原告ら代理人に委任し、弁護士費用として五万円の支払を負担した。本訴請求金額よりして右額は損害として相当性を有するものである。

(3) よつて、原告会社の損害額小計は、四三万円となる。

4  損害の填補

(一) 原告堀川

原告堀川は、本件事故に基づく損害の填補として、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から一二〇万円、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)から一〇八八万〇一一三円、合計一二〇八万〇一一三円の各支払を受け、これを左記のとおり本件損害金に充当するので、右原告の本件事故に基づく損害金残金は、九四五万九二二三円となる。

(1) 治療費内金に 六四五万〇〇五〇円

(2) 付添費用内金に 四七万二九八〇円

(3) 入院雑費内金に 六万三五〇〇円

(4) 休業損害内金に 四八一万五五六三円

(5) 慰藉料内金に 二七万八〇二〇円

(二) 原告橋口

原告橋口は、本件事故に基づく損害の填補として、自賠責保険から一二〇万円、労災保険から八八八万七一〇二円、合計一〇〇八万七一〇二円の各支払を受け、これを左記のとおり本件損害金に充当するので、右原告の本件事故に基づく損害金残金は、八四七万一九六二円となる。

(1) 治療費内金に 四四四万二九四八円

(2) 付添費用内金に 九四万七〇七〇円

(3) 入院雑費内金に 六万三五〇〇円

(4) 休業損害内金に 四六三万三五八四円

5  よつて、本件損害賠償として、被告ら各自に対し、原告堀川は、九四五万九二二三円及びこれに対する本件事故の日である昭和五五年九月二七日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告橋口は、八四七万一九六二円及びこれに対する本件事故の日である同日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告会社は、四三万円及びこれに対する本件事故の日である同日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、各支払を求める。

二  被告森島は、適式の呼出しを受けながら、本件各口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

三  被告鈴木は、請求の原因2の(二)に対し、同被告は、本件事故前の昭和五五年九月一〇日、被告車を訴外後藤俊広(以下「後藤」という。)に、代金を一八三万六七五〇円(現金価格一五五万円、割賦手数料二八万六七五〇円の合計金)とし、同年一一月末日から同五六年一〇月末日まで賦払金で支払い、右代金を完済したときは、同車の所有権を後藤に移転することとして売渡す旨の売買契約書を同訴外人との間に取り交わし、次回の車検の時点において被告車の使用者名義の変更手続をする旨約していた、また、請求の原因2の(三)に対し、右被告は、被告森島とは全く面識もない、とそれぞれ述べた。

四  原告ら代理人は、被告鈴木の答弁につき、同被告主張の被告車両の売却及び同車両の名義変更の事実は否認すると述べた。

第三証拠〔略〕

理由

一  被告森島は、適式の呼出しを受けたが、本件各口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面をも提出しないから、請求の原因記載の各事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

二  事故の発生について

原告らの被告森島との関係では、右記載のとおり、右被告が請求の原因1(事故の発生)記載の事実を自白したものとみなす。

原告らと被告鈴木との関係では、その方式及び趣旨により公務員が作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一四号証、第一六号証、第一八号証の八、一四、一九ないし二一、二五ないし二七及び二九並びに弁論の全趣旨を総合すると、請求の原因1(事故の発生)記載の事実(ただし、被告車の所有者が被告鈴木であるとの点を除く。)が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  責任原因について

1  被告森島の責任について(民法七〇九条)

右で認定した請求の原因1(事故の発生)記載の事実に、前記甲第一四号証、第一六号証、第一八号証の八、一四、一九ないし二一、二五ないし二七及び二九並びに弁論の全趣旨を併せ考えると、本件現場は、北から南へ七パーセントの下り勾配となつており、本件事故当時、降雨のため、アスフアルト舗装された路面が濡れて滑りやすくなつていたこと、被告森島は、被告車を運転して時速約四〇キロメートルで前記玉出出路を南進て本件現場に接近し、自車前方約四〇メートルの地点に、対面しの赤信号に従つて前車に続き一時停車している原告車を発見したこと、しかるに被告森島は、自車前方一四〇メートルの地点にある信号機のみに気を奪われ、前方の安全を十分確認することなく、そのままの速度で前進を続け、被告車が原告車の後方約一〇メートルに接近した時点でこれに気付き、急ブレーキをかけたが、回避する余裕もなく、本件事故を惹起したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によると、被告森島は、対面赤信号に従つて一時停車をしているが原告車を認めた場合には、被告車を減速するとともに、自車前方の安全を十分確認しつつ進行すべき注意義務があつたものといわねばならない。

しかるに、右被告は、右注意義務に違反し、被告車を減速することなく、前記信号機のみに気を奪われ、前方の安全を十分確認せずに進行した過失により、前記のような態様で本件事故を惹起したものといわねばならない。

したがつて、被告森島は、民法七〇九条に基づき、原告らが本件事故により被つた損害を賠償する責任がある。

2  被告鈴木の原告堀川及び同橋口に対する責任について

(自賠法三条)

(一) 前記甲第一四号証、第一八号証の二一、二六、二七、二九、及び原告会社代表者本人の尋問の結果により原告ら代理人主張のとおりの写真であることを認める検甲第一号証、並びに右尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。即ち、

(1) 被告鈴木は、愛知県岡崎市美合町入込五四番地において、鈴木水産冷蔵の商号で、個人で冷凍魚等の運搬業を営んでいた。

右営業の形態は、運転手が各自の持ち込み車で運搬業務を行い、右鈴木は同人らに仕事を与えて手数料を取る、いわゆる運搬あつせん業であつたが、少なくとも被告車による運搬業務に関する限り、以下にみるように、右鈴木が自己所有のトラツクを、所有権を留保して運転手に割賦売買の形式で譲渡しながら、これを用いて、右鈴木の具体的指示の下に運搬に従事させるというものであつた。

(2) 後藤は、昭和五七年九月初めころ、ついで被告森島は、後藤を介して同月六日ころ、いずれも被告鈴木の営む右運搬業の運転手として働くようになつた。そして、後藤は、この頃被告鈴木から、同被告所有の被告車を、代金一八〇万円、一か月一五万円の月賦払で、代金を完済すれば同車は買主の所有となるとの約定で買い受ける旨を約した。また、被告森島は、同月中旬ころ、後藤から、被告車を右と同じ約定で買い受ける旨を約した。

しかし、後藤と被告森島とは、いずれも被告鈴木から独立して運送業を営むのではなく、被告車は、右鈴木の営む運搬業の業務以外の目的では同車を使用しないという約束があつたものであり、個々の運搬行為も全て右鈴木の指示の下に行つていた。

(3) 同月二〇日すぎころ、後藤は被告鈴木に対し、被告車の売買代金支払のため手形を手交した。しかし、その後も、被告車は被告鈴木の運搬業務のため以外の目的で使用されたことはなかつた。そして、本件事故は、右鈴木の指示により、被告森島及び後藤が冷凍イワシ約六トンを高知県まで運搬する業務に従事している途上で発生したものであるところ、本件事故当時、被告車の車体の左右両側面及び後部の三か所には、「鈴木水産冷蔵」と書かれていた(なお、被告車の登録名義は、終始訴外ヤノスエミツのままで、名義変更の手続がとられたことはなかつた。)。

以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二) 右認定事実によると、たしかに、被告車は被告鈴木から後藤へ、後藤から被告森島へ順次売却され、後藤は被告鈴木に売買代金を支払つていたものではあるけれども、被告車の所有権は被告鈴木に留保されていたもので、後藤及び被告森島は、いずれも、被告鈴木の営む冷凍魚等の運搬業の専従者として被告車の運転に従事していたこと、被告車は、右鈴木が自己の運搬業のためにのみ専属的に使用することを条件に売却され、かつ、自己の指示の下に具体的な運搬業務を行わせていたものであつて、右運搬業以外の目的に供されることはなかつたこと、及び、本件事故の当時、所有権は依然被告鈴木に留保されていて、被告車の名義が後藤や被告森島に変更されていたこともなく、被告車の車体には「鈴木水産冷蔵」と書かれてあつたこと等の事実を総合すると、本件事故当時、被告森島は、実質的に同鈴木の従業員に近い形で稼働していたし、社会通念上も使用者と従業員との関係の外観を呈していたものであることが認められ、これに加えて、被告鈴木の冷凍魚の運搬業の方法等に照らすと、被告鈴木は、本件事故の当時、被告車に対する運行支配及び運行利益を有していたものというべきであるから、右被告は、被告車の運行供用者として、自賠法三条に基づき、原告堀川及び同橋口が本件事故によつて被つた損害を賠償する責任がある。

3  被告鈴木の原告会社に対する責任について(民法七一五条)

右1及び2で認定したところによると、被告鈴木は、自己の営む冷凍魚等の運搬業のために被告森島を専従者として使用し、その実質は従業員に近いものであつたうえ、社会通念上、使用者と従業員との関係の外観を有していたものであるところ、同被告は、右営業に従事して被告車を運転中、右1記載のような態様の過失により、本件事故を惹起したことが認められる。

右事実によると、被告鈴木は、民法七一五条一項に基づき、原告会社が本件事故によつて被つた損害を賠償する責任がある。

四  損害について

1  原告堀川の損害

(被告森島との関係)

原告堀川と被告森島との関係では、前記一記載のとおり、同被告は請求の原因3・(一)(原告堀川の損害)記載の事実を自白したものとみなされる(ただし、大阪府立病院における入院期間は、訴状に二六六日間とあり、事実欄にその旨転記した二六六日間は二六五日間の誤記と認められる。)。

したがつて、原告堀川と右被告との関係では、本件事故によつて原告堀川の被つた損害額は、左記(一)ないし(七)記載の各損害費目の額を合算した一九四一万八六三二円となる。

(一) 治療費 六四六万四五五〇円

(二) 入院付添費 一五二万二七〇〇円

職業付添人の付添費実費として一三二万七七〇〇円を要したことは前記のとおり自白したものとみなし、また、原告堀川の実母である訴外堀川美春の六五日間の入院付添費として、少なくとも一日あたり三〇〇〇円を要したことは、経験則上これを認めることができる。

(三) 入院雑費 一八万五五〇〇円

なお、入院雑費として、少なくとも一日あたり七〇〇円を要したことは、経験則上これを認めることができる。

(四) 医師への謝礼

医師への謝礼は、一般に、入院中の厚意に対する感謝のしるしとして儀礼的に贈与されるものであるから、特段の事情の認められない本件にあつては、本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

(五) 通院交通費 一五万四〇〇〇円

なお、前記認定の原告堀川の受傷の内容、治療経過にかんがみると、右通院交通費一五万四〇〇〇円は、本件事故により出費を余儀なくされたもので、その額も相当と認められるから、本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

(六) 休業損害 八五九万一八八二円

前記認定の原告堀川の収入額、休業期間に、経験則を併せ考えると、右原告は、右八五七日間の休業期間中、少なくとも三か月間につき九〇万二三〇〇円の割合による得べかりし収入を喪失したことが認められる。

(算式)

九〇万二三〇〇円×(一/三)=三〇万〇七六六円

三〇万〇七六六円×(八五七/三〇)=八五九万一八八二円(円未満切捨て。以下同じ。)

(七) 慰藉料 二五〇万円

前記認定の原告堀川の受傷の内容、程度、入通院期間その他諸般の事情を総合すると、右原告の本件受傷による精神的苦痛を慰藉するには、慰藉料として二五〇万円を認めるのが相当である。

(八) 以上(一)ないし(七)を小計すると、一九四一万八六三二円となる。

(被告鈴木との関係)

(一) 受傷、治療経過等

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第三号証の一ないし六によると、請求の原因3・(一)・(1)(受傷、治療経過等)記載の事実(ただし、大阪府立病院における入院期間は、訴状に二六六日間とあり、事実欄にその旨転記した二六六日間は二六五日間の誤記と認められる。)が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二) 治療費 六四六万四五五〇円

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第四号証の一ないし七によると、請求の原因3・(一)・(2)(治療費)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三) 入院付添費 一五二万二七〇〇円

(1) 原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第五号証の一ないし一九によると、原告堀川は、大阪府立病院における昭和五五年一〇月四日から同年一二月一六日まで及び同五六年一月二三日から同年四月二八日までの計一七〇日間の入院期間中に、職業付添人の付添費実費として、計一三二万七九〇〇円を要したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(2) 原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第六号証、前記甲第三号証の一及び経験則にると、原告堀川は、大阪府立病院における昭和五五年九月二七日から同年一一月三〇日までの六五日間にわたり、実母である訴外堀川美春の付添看護を必要とし、その間、少なくとも一日あたり三〇〇〇円の付添費を要したものと認めるのが相当であるから、右原告は、近親者による付添費用として、一九万五〇〇〇円の損害を受けたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(3) 右(1)及び(2)の付添費用を合計すると、一五二万二九〇〇円となるので、原告の請求する限度で、一五二万二七〇〇円を認める。

(四) 入院雑費 一八万五五〇〇円

前記(一)(受傷・治療経過等)で認定したところによると、原告堀川は、本件事故により、二六五日間の入院治療を要したものであり、経験則によると、右原告は、右期間中、少なくとも一日あたり七〇〇円の諸雑費を要したものと認められるから、右原告の入院雑費の損害は、一八万五五〇〇円となる。

(五) 医師への謝礼

請求の原因3・(一)・(5)(医師への謝礼)記載の事実は、これを認めるに足りる証拠がない。

(六) 通院交通費 一五万四〇〇〇円

前記(一)(受傷、治療経過等)で認定した原告堀川の受傷の内容及び治療経過に、原告会社代表者本人の尋問の結果及び弁論の全趣旨を併せ考えると、請求の原因3・(一)・(6)(通院交通費)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はなく、また、右認定の通院交通費一五万四〇〇〇円は、額としても相当性があり、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(七) 休業損害 八五九万一八八二円

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第七号証及び右尋問の結果に、前記認定の原告堀川の治療経過並びに弁論の全趣旨を併せ考えると、原告堀川は、本件事故当時、原告会社で絶縁工事職人として稼働し、本件事故前の昭和五五年七月から九月までの三か月間に、計九〇万二三〇〇円の収入を得ていたこと、及び、右原告は、本件事故により、同五五年九月二七日から同五八年一月三一日までの八五七日間にわたり休業を余儀なくされ、その間少なくとも右収入額相当の得べかりし収入を喪失したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

したがつて、右原告の本件事故に基づく休業損害は、八五九万一八八二円となる。

(算式)

九〇万二三〇〇円×(一/三)=三〇万〇七六六円

三〇万〇七六六円×(八五七/三〇)=八五九万一八八二円

(八) 慰藉料 二五〇万円

前記認定の原告堀川の受傷の内容、程度、入通院期間その他諸般の事情を総合すると、右原告の本件受傷による精神的苦痛を慰藉するには、慰藉料として二五〇万円を認めるのが相当である。

(九) 右(二)ないし(八)記載の各損害費目の額を合計すると、小計一九四一万八六三二円となる。

2  原告橋口の損害

(被告森島との関係)

原告橋口と被告森島との関係では、前記一記載のとおり、同被告は請求の原因3・(二)(原告橋口の損害)記載の事実を自白したものとみなされる。

したがつて、原告らと右被告との関係では、本件事故によつて原告橋口の被つた損害額は、左記(一)ないし(七)記載の各損害費目の額を合算した一六七二万六九六〇円となる。

(一) 治療費 四五三万〇九四八円

(二) 入院付添費 一二七万八五五〇円

職業付添人の付添費実費として九八万一五五〇円を要したことは前記のとおり自白したものとみなし、また、原告橋口の妻である訴外橋口重子の九九日間の入院付添費として、少なくとも一日あたり三〇〇〇円を要したことは、経験則上これを認めることができる。

(三) 入院雑費 一三万三七〇〇円

なお、入院雑費として、少なくとも一日あたり七〇〇円を要したことは、経験則上これを認めることができる(ただし、阪和病院と阪和記念病院との双方に入院した日は、併せて一日として計算する。)。

(四) 医師への謝礼

医師への謝礼は、一般に、入院中の厚意に対する感謝のしるしとして儀礼的に贈与されるものであるから、特段の事情の認められない本件にあつては、本件事故と相当因果関係のある損害と認めることはできない。

(五) 通院交通費 九万一八八〇円

なお、前記認定の原告橋口の受傷の内容、治療経過にかんがみると、右通院交通費九万一八八〇円は、本件事故により出費を余儀なくされたもので、その額も相当と認められ、本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

(六) 休業損害 八五九万一八八二円

前記認定の原告橋口の収入額、休業期間に、経験則を併せ考えると、右原告は、右八五七日間の休業期間中、少なくとも三か月間につき九〇万二三〇〇円の割合による得べかりし収入を喪失したことが認められる。

(算式)

九〇万二三〇〇円×(一/三)=三〇万〇七六六円

三〇万〇七六六円×(八五七/三〇)=八五九万一八八二円

(七) 慰藉料 二一〇万円

前記認定の原告橋口の受傷の内容、程度、入通院期間その他諸般の事情を総合すると、右原告の本件受傷による精神的苦痛を慰藉するには、慰藉料として二一〇万円を認めるのが相当である。

(八) 以上(一)ないし(七)を小計すると、一六七二万六九六〇円となる。

(被告鈴木との関係)

(一) 受傷、治療経過等

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第八号証の一ないし八によると、請求の原因3・(二)・(1)(受傷、治療経過等)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二) 治療費 四五三万〇九四八円

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第九号証の一ないし七によると、請求の原因3・(二)・(2)(治療費)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三) 入院付添費 一二七万八五五〇円

(1) 原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第一〇号証の一ないし一三によると、原告橋口は、昭和五五年九月二九日から同五六年二月八日までの入院期間中に、職業付添人の付添費実費として、計九八万一五五〇円を要したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(2) 原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第一一号証の一、二、前記甲第八号証の二ないし四及び右尋問の結果を総合すると、原告橋口は、阪和病院ないし阪和記念病院に入院中の昭和五五年九月二七日から同五六年一月三日までの九九日間にわたり、前記職業付添人による付添の他に、妻である訴外橋口重子の付添を必要としたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はなく、経験則によると、右原告は、右付添期間中、少なくとも一日あたり三〇〇〇円の付添費を要したものと認めるのが相当であるから、右原告は、近親者による付添費用として、二九万七〇〇〇円の損害を受けたことが認められる。

(3) 右(1)及び(2)の付添費用を合計すると、一二七万八五五〇円となる。

(四) 入院雑費 一三万三七〇〇円

前記(一)(受傷、治療経過等)で認定したところによると、原告橋口は、本件事故により、一九一日間(なお、阪和病院と阪和記念病院との双方に入院した日は、併せて一日として計算する。)の入院治療を要したものであり、経験則によると、右原告は、右期間中、少なくとも一日あたり七〇〇円の諸雑費を要したものと認められるから、右原告の入院雑費の損害は、一三万三七〇〇円となる。

(五) 医師への謝礼

請求の原因3・(二)・(5)(医師への謝礼)記載の事実は、これを認めるに足りる証拠がない。

(六) 通院交通費 九万一八八〇円

前記(一)(受傷、治療経過等)で認定した原告橋口の受傷の内容及び治療経過に、原告会社代表者本人の尋問の結果及び弁論の全趣旨を併せ考えると、請求の原因3・(二)・(6)(通院交通費)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はなく、また、右認定の通院交通費九万一八八〇円は、額としても相当性があり、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(七) 休業損害 八五九万一八八二円

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第一二号証及び右尋問の結果に、前記認定の原告橋口の治療経過並びに弁論の全趣旨を併せ考えると、原告橋口は、本件事故当時、原告会社で絶縁工事職人として稼働し、本件事故前の昭和五五年七月から九月までの三か月間に、計九〇万二三〇〇円の収入を得ていたこと、及び、右原告は、本件事故により、同五五年九月二七日から同五八年一月三一日までの八五七日間にわたり休業を余儀なくされ、その間少なくとも右収入額相当の得べかりし収入を喪失したことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

したがつて、右原告の本件事故に基づく休業損害は、八五九万一八八二円となる。

(算式)

九〇万二三〇〇円×(一/三)=三〇万〇七六六円

三〇万〇七六六円×(八五七/三〇)=八五九万一八八二円

(八) 慰藉料 二一〇万円

前記認定の原告橋口の受傷の内容、程度、入通院期間その他諸般の事情を総合すると、右原告の本件受傷による精神的苦痛を慰藉するには、慰藉料として二一〇万円を認めるのが相当である。

(九) 右(二)ないし(八)記載の各損害費目の額を合計すると、一六七二万六九六〇円となる。

3  原告会社の損害

(被告森島との関係)

原告らと被告森島との関係では、前記一記載のとおり、同被告は請求の原因3・(三)・(1)(物損)記載の事実を自白したものとみなされる。

したがつて、原告会社の右関係における損害額は、三八万円と認められる。

(被告鈴木との関係)

原告会社代表者本人の尋問の結果により真正に成立したものと認める甲第一五号証及び右尋問の結果によると、請求の原因3・(三)・(1)(物損)記載の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

五  損害の填補について

1  本件事故に基づく損害の填補として、原告堀川は、自賠責保険から一二〇万円、労災保険から一〇八八万〇一一三円、合計一二〇八万〇一一三円の、原告橋口は、自賠責保険から一二〇万円、労災保険から八八八万七一〇二円、合計一〇〇八万七一〇二円の、各支払を受けた事実は、原告らが自認するところである。

2  また、原告堀川及び同橋口と被告鈴木との関係では、その方式及び趣旨により公務員が作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一八号証の二八及び二九によると、被告森島は、原告堀川及び同橋口に対して損害金の一部として各一六万円宛を支払つていることが窺われないでもないが、この点について、被告鈴木は、何ら主張していないので、これを認めるに由ない。

六  弁護士費用について

原告らが本訴提起のため原告ら代理人に訴訟代理の委任を余儀なくされたことは以上認定の各事実に徴し明らかであり、これに本件訴訟の経過、以上認定の認容額その他諸般の事情を併せ考えると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用として、原告堀川には七〇万円、原告橋口には六〇万円、及び、原告会社には五万円を、それぞれ認めるのが相当である。

したがつて、原告堀川は、前記四(損害について)で認定した損害額小計一九四一万八六三二円から、前記五(損害の填補について)記載の填補額一二〇八万〇一一三円を控除し、右弁護士費用を加えた八〇三万八五一九円、原告橋口は、前記四で認定した損害額小計一六七二万六九六〇円から、前記五記載の填補額一〇〇八万七一〇二円を控除し、右弁護士費用を加えた七二三万九八五八円、及び原告会社は、前記四で認定した損害額三八万円に、右弁護士費用を加えた四三万円が、それぞれ本件事故に基づく損害額となる。

七  結論

以上にとおりであるから、本件損害賠償として、被告らは、各自、原告堀川清隆に対し、金八〇三万八五一九円及びこれに対する本件事故の日である昭和五五年九月二七日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告橋口連文に対し、金七二三万九八五八円及びこれに対する本件事故の日である同日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、原告有限会社近代保温工業に対し、金四三万円及びこれに対する本件事故の日である同日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、右支払義務があるから、原告の本訴請求は、右の限度でいずれも理由があるので、その限度で正当としてこれを認容し、原告堀川清隆及び同橋口連文のその余の請求はいずれも理由がないから、失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条但書、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 弓削孟 加藤新太郎 五十嵐常之)

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